交通事故と健康保険の関係とは
交通事故の被害者から、「交通事故を原因とするケガには健康保険が使えないと医師から言われたが、治療費の支払いはどうすればよいか」といったご相談を受けることがあります。
交通事故が原因のケガには健康保険が使えないと思われている方が少なくありませんが、健康保険被保険者証を用いて保険診療を受けることができます。ただし、条件があります。
被害者の方にも過失がある場合や過失割合に争いがある場合は、健康保険を使った方が有利になることがあります。
これに対し、追突事故など被害者の過失がゼロの場合は、健康保険を使っても使わなくても、示談の際に受け取ることができる金額は変わりません。
なお、労災保険が使える場合、健康保険は使えないことになっているので(健康保険法1条・55条等)、ご注意ください。
以下、交通事故と健康保険との関係や、健康保険を使う際の条件等についてご説明します。
目次
交通事故被害者が健康保険で治療を受けるための条件
本来、交通事故などの第三者行為によってケガを負ったとき(人身事故)の治療費は、加害者が負担すべきものですが、きちんと届出をすることで、交通事故被害者が健康保険で治療を受けることができます。
その届出とは、被害者の方がご加入されている健康保険機関(国民健康保険や協会けんぽ等)に、「第三者行為による傷病届」を提出することです。
この手続きを踏めば、健康保険証を用いて治療を受けることに何の問題もありません。
国民健康保険の場合の「第三者行為による傷病届」は、管轄の市区町村によって手続きが異なることがありますので、届出の際は、国保年金課給付係にご確認ください。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合の「第三者行為による傷病届」の場合は、協会けんぽのホームページで届書用紙のダウンロードができます。
添付書類や注意事項なども掲載されているので、ご参照ください。
本来は加害者が支払うべき治療費を保険機関が立替え
第三者の行為によってケガを負った被害者の治療費は、その全額を交通事故の相手方(加害者)が負担するのが原則ですが、第三者行為による傷病届の手続きを踏めば、健康保険を用いて、医療機関で治療を受けることができます。
その治療費は、被害者が加入している保険機関が負担するのではなく、交通事故の相手方(加害者)が支払うべき治療費を保険機関が一時的に立て替えてくれるだけなので、その立て替えてくれた治療費は、後日、保険機関から交通事故の相手方(加害者)へ請求されることになります。
病院で「交通事故の治療に健康保険は使えない」と言われたら
交通事故が原因のケガ治療にも健康保険が使えることは、旧厚生省や厚生省から通達がなされています。
※旧厚生省の通達(昭和43年10月12日保険発第106号「健康保険及び国民健康保険の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取扱いについて」)や、厚生労働省の通達(平成23年8月9日保発0809第3号「犯罪被害や自動車事故等による疾病の保険給付の取り扱いについて」)に、その旨が記載されています。
労災保険が使える場合は要注意
交通事故の場合も保険診療を受けられますが、労災保険が使える場合に健康保険は使えない旨が健康保険法(第1条、第55条など)で定められているので、病院からはそのことを言われている可能性もあります。
業務時間中の事故、通勤途上での事故など、本来は労災保険が使えるにもかかわらず健康保険を使ってしまった場合、次のいずれかの手続きを行う必要があります。
- 健康保険組合が負担してくれた医療費を、健康保険組合に返金してから労災保険へ請求する手続き
- 医療機関において労災保険に切り替える手続き
前者の場合、被害者の方が一時的にその医療費(健康保険組合が負担した金額)全額を負担しなければなりません。
病院が交通事故に健康保険は使えないと言う理由
労災保険が使えるケースではないのに、病院が「健康保険は使えない」と言うのは、保険診療より自由診療の方が医療費が高くなることが原因となっていることも考えられます。
その場合は、病院窓口で「第三者行為の届出もしますし、担当省庁からは交通事故でも健康保険が使えるとの通知も出されているはずです」と話してみましょう。
どうしても健康保険での治療に対応してもらえないようであれば、他の病院に通われることもご検討ください。
ご不明なことがあれば、当事務所の無料相談をご利用ください。
無料相談は何度でもお受けしております。お電話やFAX、メールにて、全国対応いたします。