交通事故で後遺障害が認定された場合の逸失利益の相場と計算方法

公開日:2016-04-10 |最終更新日:2022-07-10

後遺障害(後遺症)による逸失利益の計算方法は

交通事故の被害によりケガを負い、治療が終了したにもかかわらず後遺障害(後遺症)が残ってしまった場合、被害者は相手方(加害者)に対して、後遺障害に伴う逸失利益を請求することができます。

後遺障害に伴う逸失利益には、労働能力の低下の程度、収入の変化、将来の昇進・転職・失業等の不利益の可能性、日常生活上の不便といったポイントが考慮されます。

この記事では、逸失利益を計算する際に頻出する用語を解説しながら、逸失利益の計算方法について具体的にご説明します。

交通事故のおける逸失利益の計算ポイント

冒頭に記載のとおり、後遺障害に伴う逸失利益の計算には、次のポイントが考慮されます。

  • 労働能力の低下の程度
  • 収入の変化
  • 将来の昇進・転職・失業等の不利益の可能性
  • 日常生活上の不便等

※後遺障害に伴う逸失利益の場合は、死亡による逸失利益の場合と異なり、生活費を控除しないのが原則です。

これらのポイントが考慮され、一般的には、次の計算式を用いて逸失利益の金額を算出します。

一般的な逸失利益の計算式
基礎収入額 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数(中間利息控除)

以下、逸失利益を計算する際に頻出する用語について解説します。

逸失利益の「基礎収入額」とは

基礎収入額については、原則として交通事故に遭う前の現実収入を基礎としますが、将来、現実収入額以上の収入を得られる立証があれば、その金額が基礎収入となります。

なお、実収入額が賃金センサスの平均賃金を下回っていても、将来、平均賃金程度の収入を得られる可能性があれば、平均賃金を基礎収入として算定できます。

逸失利益の「労働能力喪失率」とは

労働能力喪失率とは、労働能力の低下の程度を指します。

労働能力喪失率については、労働省労働基準局長通牒(昭32.7.2基発第551号)別表の「労働能力喪失率表」を参考とし、被害者の職業、年齢、性別、後遺障害(後遺症)の部位、程度、交通事故前後の稼働状況等を総合的に判断して具体例にあてはめて評価されます。

実際には、「労働能力喪失率表」を形式的にあてはめて計算されることが一般的です。

ご参考まで

逸失利益の「労働能力喪失期間」とは

労働能力喪失期間の始期は、症状固定日です。症状固定は医師が判断します。
なお、未就労者の就労の始期は、原則18歳としますが、大学卒業を前提とする場合は大学卒業時とします。

労働能力喪失期間の終期は、原則67歳とします。
症状固定時の年齢が67歳を超える者については、原則として簡易生命表の平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。
症状固定時から67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の2分の1より短くなる者の労働能力喪失期間は、原則として平均余命の2分の1とします。

但し、労働能力喪失期間の終期は、職種、地位、健康状態、能力等により上記原則と異なった判断がなされる場合があります。
事案によっては期間に応じた喪失率の逓減(ていげん)を認めることもあります。

なお、むち打ち症の場合は、後遺障害12級で喪失期間10年程度、後遺障害14級で喪失期間5年程度に制限する例が多く見られますが、後遺障害の具体的症状に応じて適宜判断すべきでしょう。

ご参考まで

逸失利益の「中間利息控除」とは

労働能力喪失期間に対応した中間利息の控除とは、本来、逸失利益は1年ごとに発生していくものですが、便宜上、まとめて先取りするため、(2020年4月1日~2023年3月31日の場合)年3%の割合で先取りした分の利息控除を行うというものです。

2020年4月1日以降、民法(債権法)改正により、法定利率が年5%から年3%に変更されたため、時期に応じて利息控除の割合が異なります。

  • 2020年3月31日以前の場合:法定利率5%
  • 2020年4月1日以後の場合:法定利率3% ※3年ごとに見直し(民法404条)

改正後の法定利率は当面3%ですが、法務省令で定めるところにより、3年を一期として、一期ごとに変動するものとされています。

ご参考まで

逸失利益の「ライプニッツ係数」とは

上記でご説明した「中間利息控除」には、2通りの方式があります。

  • ライプニッツ式 ※東京地裁にて採用
  • ホフマン式

東京地方裁判所は前者の「ライプニッツ式」を採用していて、大阪地方裁判所や名古屋地方裁判所も同じく「ライプニッツ式」を採用する旨を表明しています。

なお、中間利息控除の基準時は、「症状固定時」とするのが実務の大勢ですが、「事故時」とする裁判例もみられます。

ご参考まで

後遺障害に伴う逸失利益の計算例

「有職者・就労可能者の場合」と「未就労者の場合」の2通りに分けて計算例をご紹介します。

有職者や就労可能者の場合

【計算式】
基礎収入額 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

【具体例】
症状固定時の年齢は50歳、年収500万円の会社員が交通事故でケガを負い、後遺障害が残ったことにより労働能力が35%低下した場合

具体例の計算方法
基礎収入5,000,000円 × 喪失率0.35 × 係数13.166(※) =逸失利益23,040,500円
※50歳から67歳までのライプニッツ係数(別表Ⅱ-1 就労可能年数とライプニッツ係数表

18歳未満の未就労者の場合

【計算式】
基礎収入額 × 労働能力喪失率 ×(67歳に達するまでのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数)

【具体例】
症状固定時の年齢は10歳、小学生の男子が交通事故でケガを負い、後遺障害が残ったことにより労働能力が35%低下した場合

10歳の小学生が後遺障害の認定を受けた場合、就労可能年数の67歳から年齢10歳を差し引くと57年間となりますが、小学生は基本的に働かないため、67歳に達するまでの係数から18歳に達するまでの係数を差し引きます。

したがって、10歳の場合のライプニッツ係数は、
27.1509(57年に対応する係数) − 7.0197(8年に対応する係数) =20.131 となります。

ただ、その都度計算しなくても、国土交通省が公表している早見表(別表Ⅱ-1 就労可能年数とライプニッツ係数表)をご覧いただければ、「18歳未満の者に適用する表」の、年齢10歳の係数に「20.131」と記載されているので、ご参考にしてください。

具体例の計算方法
基礎収入5,459,500円(※) × 喪失率0.35 × 係数20.131 =逸失利益38,466,818円
賃金センサス(男女別の全年齢平均賃金)

賃金センサスとは(2021年3月31日発表版)

賃金センサスとは、政府が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の結果に基づき、労働者の性別、年齢、学歴等の別に、その平均収入をまとめた資料のことをいいます。

下表は、2021年3月31日に発表された2020年(令和2年)の賃金センサスを一覧にしたもので、逸失利益を計算する際に重要な部分のみ抜粋しました。

【令和2年の平均賃金】全労働者

男女計・学歴計・全年齢の平均額 4,872.9

(単位:千円)

【令和2年の平均賃金】学歴別・男女別

学歴別/性別 男性 女性
全学歴 5,459.5 3,819.2
中卒 4,142.0 2,778.2
高卒 4,747.5 3,209.5
専門学校卒 4,843.9 4,006.4
高専・短大卒 5,737.2 4,006.4
大学卒 6,379.3 4,510.8
大学院卒 7,910.5 6,480.6
不明 4,220.1 3,008.4

(単位:千円)

【令和2年の平均賃金】年齢別・男女別

年齢別/性別 男性 女性
全年齢 5,459.5 3,819.2
~19歳 2,505.5 2,297.3
20~24歳 3,256.7 3,010.9
25~29歳 4,103.7 3,598.7
30~34歳 4,756.3 3,778.0
36~39歳 5,411.3 3,973.9
40~44歳 5,903.3 4,117.0
45~49歳 6,357.9 4,192.2
50~54歳 6,839.6 4,210.8
55~59歳 6,761.7 4,103.9
60~64歳 4,719.2 3,345.7
65~69歳 3,839.8 2,953.4
70歳~ 3,491.6 2,971.5

(単位:千円)

賃金センサス参照元資料
政府統計の総合窓口「賃金構造基本統計調査

交通事故専門弁護士にご相談ください

後遺障害に伴う逸失利益について、被害者ご自身で計算されるのは非常に難しいところがあります。

適正な逸失利益の金額を調べたいという場合、交通事故を専門的に扱っている弁護士に一度ご相談されてみると良いでしょう。

当事務所でも交通事故の無料相談を受け付けているので、お気軽にご利用ください。無料相談は全国対応しており、お電話やメールにて何度でもご利用いただけます。

ご依頼後も、事務所までお越しいただかずに解決(示談成立)までトータルサポートいたしますので、遠方にお住まいの方もご遠慮なくお問い合わせください。

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弁護士 山﨑 賢一 (Kenichi Yamazaki)
弁護士 山﨑 賢一 (Kenichi Yamazaki)

【東京弁護士会所属 No.21102】弁護士歴35年。交通事故取扱開始から21年のキャリアの中で手掛けた案件のうち交通事故分野は9割超。2023年末で累計2,057件の解決件数があり、年間にほぼ100件以上の交通事故事案を解決に導いています(2024年1月現在)。示談金の増額がなければ弁護士費用は一切不要の「完全出来高報酬制」で交通事故被害者を全面サポート!全国対応、交通事故のご相談は何度でも無料です。