高齢運転者はなぜ踏み間違い事故を起こすのか
昨年(2016年)、高齢運転者による重大な交通事故が相次ぎましたね。
アクセルとブレーキの踏み間違いで、店舗や民家に突進し、複数の死傷者が出ました。
以前から問題視されていた高齢運転者の交通事故。
なぜ、高齢運転者は、踏み間違いによる事故を起こしてしまうのでしょうか。その原因と、高齢運転者に関する世の中の動きをまとめました。
目次
高齢運転者の踏み間違い
踏み間違いは、年齢別に見ると、実は29歳以下が最も多いといわれています。これは、免許を取得してからの運転期間が浅いためです。
また、30~50代でも踏み間違いは起こり得ますし、高齢運転者だけが起こす事故ではありません。
ではなぜ、高齢運転者の踏み間違い事故が多発しているといわれるのでしょうか。
それは、高齢運転者の踏み間違いは、重大な事故に発展する場合が多く、ニュースでも大きく取り上げられるからでしょう。
29歳以下や30~50代の場合は、たとえ踏み間違いをしても、即座にブレーキを踏んで、運転の立て直しが図れます。
対して高齢運転者は、反射神経、身体機能の低下やパニックによって、更にアクセルを踏み込んでしまい、大きな事故に繋がる可能性が高いのです。
交通事故を起こす高齢運転者の特徴①
交通事故を起こしてしまう高齢運転者に最も共通する特徴として挙げられるのは、瞬時に状況を理解し、判断する力が衰えているということです。
突然目の前に現れた障害物に対し、避けたり、停車させて立て直したり等、咄嗟の判断ができなくなっているのです。
例え、毎日運転をしていても、通り慣れた道でも、トラブルが起きないとは言い切れません。
不測の事態に脳が追い付かず、自分でもよく分からない行動を取ってしまうのです。
また、普段は正常なのに、運転中に突然頭が真っ白になる、運転の仕方を忘れてしまうなどの状況に陥る人もいます。
これは、脳の衰えによって起こるもので、完全な認知症とは呼べません。
交通事故を起こす高齢運転者の特徴②
実は、かなり多いのが「自分は大丈夫だ」という慢心によるものです。
記憶力や判断力が衰えているのに、若い頃と同じような気持ちでいるために、自分の状況が見えていないのです。
また、高齢運転者は、運転歴が長いために基本を忘れ、自己流で通している人もいます。
高齢運転者の免許返納について
こうした事故を受け、「70歳以上の高齢運転者は、運転免許の返納を義務付けるべきだ」という意見が出始めました。
安全のためには、年齢によって一律に返納を義務付けることも一理ありますが、例えば、次のような反対意見もあります。
- 交通手段の確保が難しい地域や環境で暮らしているため、車を運転できなくなると、生活に支障をきたす。
- 反射神経や身体機能の低下を自覚し、安全運転に徹している。
- 運転をすることで、生活のメリハリや、健康を保てている。
免許返納を義務づけることは簡単ではありません。
そうした中、「免許返納してもいい」と考えて、自主的に返納される人もいます。
ここからは運転免許返納について説明していきます。
運転免許返納とは
病気や高齢などを理由に、自主的に運転免許の取り消しが申請できる制度です。
返納後、様々な特典が受けられます。
【運転経歴証明書】
運転免許証を身分証明(本人確認書類)として使用されていた人もいるのではないでしょうか。
返納してしまうと、身分を証明するものが無くなってしまいますよね。
健康保険証などでも良いのですが、写真付きの身分証明は、様々な手続きの本人確認で重宝します。
その際、免許証の代わりに使えるのが『運転経歴証明書』になります。
免許証を返納すると発行され、期限や更新がないのも嬉しいところです。
また、こちらを提示することで下記のような特典が受けられます。
【交通機関の割引】
半額や1割引、タクシー券の配布など地域によって異なります。
【引っ越し料金】
割引額は地域によって異なりますが、10%程度が多いです。
【娯楽料金】
美術館や各店舗、温泉施設などの割引が受けられます。
これらも地域によって異なります。
その他にも補聴器の購入割引や銀行預金利息の割増など、お得なサービスが豊富です。
高齢運転者に対して国の取り組み
自動運転や危険察知で自動停止するなど、車がどんどん進化を遂げている中、後を絶たない高齢者による運転事故。
国が高齢運転者のためにできること。
それは、高齢者が自身の運転技術を確認したうえで、運転技術を再度学ばせる場を設けることでした。
高齢者講習
70歳以上のドライバーが、運転免許証を更新する際に受講することを国から義務づけられています。
流れとしては、再度交通ルールをビデオで観たり、話を聞いたり、機械を使用して動体視力や夜間視力を検査します。
最後は、実際に運転し、指導員から運転に関する助言や指導をしてもらい、3時間ほどで終了します。
問題がなければ、『高齢者講習終了証明書』が交付されますが、運転中の度重なる交通違反をした場合、専門の診断が必要になります。
75歳以上の高齢者講習
流れは、上記でご紹介した70歳以上の高齢者講習と同じですが、75歳以上の場合は、『講習予備検査』が加えられます。
検査員の説明に従って、問題の解答を記入していきます。
今年は何年か、今日は何曜日か、など簡単なものからイラストや数字を用いた問題です。
これは、受講者の記憶力や判断力を確かめるもので、著しく低下している場合は、専門医の診断を勧められます。
高齢ドライバーが安全に運転できるよう、悲しい事故が起きてしまわないよう、考え続けていくことが大事ではないでしょうか。