交通事故と歩きスマホについて

歩きスマホ

やよい共同法律事務所の弁護士やまケンこと、山﨑賢一です。

「歩きスマホ」は、社会問題の一つとなっており、交通事故の一因ともなりうる行動です。このため、携帯電話各社や自治体を中心に、歩きスマホ防止の呼びかけがされています。

それでは、歩きスマホのどこが問題で、どのような理由で交通事故に結び付くのでしょうか。また、歩きスマホによる交通事故を防ぐには、どのような方法があるのでしょうか。

このコラムで、一緒に考えてみましょう。

そもそも、歩きスマホはどうしていけないのか?

人が歩行する時、通常ならば前後左右を見て、危険がないかどうかを確認しながら歩きます。自動車が近づく音なども、状況を把握するために使いますね。

ところが、スマートフォンを操作しながら歩くと、視覚がスマートフォンに集中します。

そのため、前後左右を見る割合が減少し、人とぶつかったり、つまずいたりするなどの原因となります。

車が接近していることに気づかなければよけるための行動にも結び付かず、交通事故に直結します。

2014年に福岡大学工学部社会デザイン工学科で行われた実験では、以下の結果が出ています。

歩きスマホをしている場合は、歩行中の時間のうち6割はスマートフォンの画面を見ていた時間とのことです。

これは歩行中に周囲の状況を確認している時間が4割しかないことを意味します。

また、見ている範囲も狭くなっています。

特に左右方向の範囲が狭く、歩きスマホをしていない場合に比べて6割程度の範囲しか見ていないという結果が出ています。

つまり、歩きスマホをすると、周りの状況を見ている時間は半分以下と少なくなり、また狭い範囲しか見ていないことになります。

実際に、歩きスマホ中に人にぶつかりそうになったり、転びそうになったりした経験を持つ人も多いでしょう。

歩きスマホによる交通事故、どのような可能性がある?

それでは、歩きスマホによる交通事故はどのようなものが考えられるのでしょうか。

1.車の接近に気づかない

道路を横断中の時や、歩道が無い道路を歩いている際、歩きスマホをしていると車の接近に気づきにくくなります。

この時、ドライバーも「歩行者の方がよけてくれるだろう」と思って運転していると、歩行者にぶつかり交通事故となる可能性が高くなります。

また横断歩道で横断中の場合、右左折車にも注意が必要です。

通常であれば車が接近してくると、タイムリーに気づくことができます。

しかし、歩きスマホをしていると車の接近に気づきにくくなりますから、車が突っ込んでくるとよける間もなく交通事故になることもあります。

2.信号が変わったことに気づかない

道路幅が広い場所にある横断歩道でも注意が必要です。

渡っている間に、信号が変わることがあります。

通常であれば歩行者信号の点滅時に気づき、急いで渡ろうとしますが、歩きスマホをしていると信号が変わったことに気づかない場合があります。

信号が変わり車道の信号が青になった場合、歩行者に突っ込んでくる車と衝突し交通事故になる危険があります。

3.いつの間にか信号無視

歩きスマホをしていると、いつの間にか信号無視をしている場合があります。

車道と歩道の段差がある場合は車道に出たときの衝撃で気づきやすいのですが、段差が少ない場合はいつの間にか赤信号で横断歩道や車道に踏み込んでいた、ということもあります。

これも青信号で突っ込んでくる車と衝突し、交通事故に遭う原因となるでしょう。

歩きスマホによる交通事故を防ぐには?

歩きスマホは歩行者が周りに気づかなかったり、急に立ち止まったりする等により、交通事故の一因となっています。

これを防ぐためには、どうしたら良いのでしょうか。

歩行者はもとより、ドライバーの方でも注意できることがあるのかどうか、説明していきます。

「歩きスマホ」をしないことが第一!

最も重要な対策は、当然ですが、歩きスマホをしないことです。

歩行者といえども周りの状況に注意を払い、安全に歩行することが求められています。

そのため歩きスマホをしている歩行者が交通事故に遭った場合、安全に歩行する義務を怠ったという点で歩行者の過失が認定される可能性もあります。

多忙な現代、歩きながら操作したいこともあるとは思いますが、事故に遭ってしまっては元も子もありません。

立ち止まって内容を確認することを心掛けましょう。

なお、情報を音や振動で伝えるアプリなどもあります。必要に応じて、使うことを検討してください。

ドライバーができる対策・その1~とにかく、よく見ること~

歩きスマホをする・しないは歩行者が決めることですから、ドライバーが関与することはできません。

しかし、歩きスマホをしている歩行者を交通事故に遭わせない対策は、ドライバー自身でできます。

ポイントの1つは、常に周りの状況をよく把握しておくことです。

道路を通行する人の中には老人や子供など、特に気を配らなければならない人が少なからずいます。

歩きスマホをしている人もその中の一人と考え、注意して運転しましょう。

ドライバーができる対策・その2~「かもしれない」運転の励行~

ドライバーができるもう一つのポイントは、常に「かもしれない」運転を励行することです。

歩行者の動きを、あなたが決めることはできません。

歩行者が、歩道から急に車道に出てこないと言い切れますか?スマホに気を取られて、いつの間にか車道に歩行者が出てきているということもあります。

横断している歩行者は、そのままのペースで渡り切ると言い切れますか?車道の真ん中で急に止まることだってあります。

これらは、常に「かもしれない」と思って運転することにより、その多くを交通事故から防ぐことができます。

最後に

以上、歩きスマホの危険性と、交通事故を防ぐためにはどうしたら良いかという点について説明しました。

歩きスマホは画面に注意を向けがちですから、まわりへの注意が弱まります。

このため、車の接近に気づかない等、交通事故の原因となります。

交通事故を起こさないためには、歩きスマホをしないことが一番です。

しかし、ドライバーも道路状況をよく見て、「かもしれない」運転を励行することにより、自らが加害者になることを防ぐことができます。

少しの時間を惜しんで歩きスマホをしたために交通事故に遭うことは、結果として誰も幸福にしません。

この記事をお読みのあなたも、この瞬間から歩きスマホをしないようにしましょう。

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弁護士 山﨑 賢一 (Kenichi Yamazaki)
弁護士 山﨑 賢一 (Kenichi Yamazaki)

【東京弁護士会所属 No.21102】弁護士歴35年。交通事故取扱開始から21年のキャリアの中で手掛けた案件のうち交通事故分野は9割超。2023年末で累計2,057件の解決件数があり、年間にほぼ100件以上の交通事故事案を解決に導いています(2024年1月現在)。示談金の増額がなければ弁護士費用は一切不要の「完全出来高報酬制」で交通事故被害者を全面サポート!全国対応、交通事故のご相談は何度でも無料です。