高速道路で多発する交通事故とは
やよい共同法律事務所の弁護士やまケンこと、山﨑賢一です。
高速道路を安全に運転するためには、まず、高速道路ではどのような交通事故が多いのかを知ることが大切です。
自転車や歩行者が高速道路を通行することはできないため、一般道に比べて、交通事故の危険性が少ないと勘違いされてしまいがちです。
しかし、いざ交通事故を起こしてしまうと、重大な事故に発展してしまいかねないことを肝に銘じておきましょう。
目次
高速道路で多発する交通事故
警視庁の調べによると、平成27年度の高速道路での交通事故のうち死亡事故は200件。特に、夏の7月から8月にかけてと、冬の11月から年末にかけての2つの時期が多い傾向にあるようです。
これは、夏休みと年末年始に行楽や帰省で高速道路を利用するドライバーが多いことと関係があると思われます。
それでは具体的に、どのような交通事故が多く発生しているのでしょうか。
中央分離帯やガードレールへの衝突による交通事故
スピードの出しすぎや雨天時のスリップなどによってコントロール不能となり、中央分離帯やガードレールに衝突してしまう事故です。
このような交通事故の場合、乗車している人が車外へ放り出されてしまい、後続車両に轢かれるというケースもあります。
特に、後部座席でシートベルトを装着していなかった同乗者が被害に遭うことが多いようです。
対面区間での反対車線へのはみ出しによる交通事故
通常、高速道路では中央分離帯が設置されていますが、片側1車線の高速道路では、樹脂製のラバーポールなど簡易中央分離施設で仕切られている区間があります。
このような区間では、ちょっとしたわき見運転によってセンターラインを越えてしまい、対向車線にはみ出して対向車と正面衝突するという交通事故が、少なくありません。
停車中の車両や、降車して路上にいる人への衝突事故
車両の故障等で本線や路肩に停まっている自動車や、降車して路上にいる人に、後続車両が気付かずに衝突してしまう交通事故も少なくありません。
ちなみに、高速道路で車両の故障等によりやむを得ず停車する場合には、後続車両が早めに気付くことができるよう停止表示器材(発煙筒や三角表示板など)を表示するよう義務付けられています。
渋滞最後尾の自動車への追突事故
混雑による渋滞の他、車両の故障、工事による交通規制など、渋滞が発生する原因はさまざまですが、そのような渋滞の最後尾で停車あるいは減速している自動車に、後続車両が追突してしまうという交通事故です。
最悪の場合、追突された自動車の前方車両や、追突してしまった車両の後続車両も巻き込む多重事故(玉突き事故)に発展してしまうケースもあります。
ご存知ですか?NEXCOの「5つの約束」
高速道路を管理・運営しているNEXCO東日本・中日本・西日本の3社では、高速道路を安全に走行するためのルールとマナーを「5つの約束」として提唱しています。
安全速度を守る
高速道路における交通事故(死亡事故)のうち、スピードの出し過ぎによる交通事故の割合は全体の約10%。
制限速度の順守はもちろん、天候や路面状況によっては更に速度が規制されることもあるので、速度標識には十分に注意しましょう。
十分な車間距離をとる
一般的に、安全な運転に必要な車間距離は時速80kmで走行している時には80m、時速100kmで走行している時には100mと言われています。
雨天時の交通事故(死亡事故)の発生率は、晴天時の約3倍という統計もありますので、路面が濡れている場合には、十分な車間距離をとるように心がけましょう。
割り込みをしない
車線変更する際には、後続車に対する配慮が必要です。
割り込みをされた後続車が急ブレーキをかけたり急にハンドルを切ったりすることで、交通事故に発展してしまう可能性があります。
わき見運転をしない
運転しているドライバーにとってはほんの一瞬のつもりでも、時速100kmで走行している車は、1秒間に28mも進んでいます。
わき見運転はもちろん、少し考え事をしていただけでも、前方車両のトラブルに気付くのが遅れてしまい、追突事故に発展する危険性があるのです。
なお、追突事故は、交通事故の中で最も多いケースだと言われていて、当事務所で依頼を受けた交通事故案件の多くも追突事故です。
路肩走行をしない
渋滞中などに路肩を走行すると、いざという緊急時に邪魔になり、救急活動の妨げとなってしまう場合がありますので、絶対にやめましょう。
一見すると「当たり前のこと」のように聞こえますが、高速道路を利用した経験のある方ならば、この5つを全て実行するのはかなり難しいことだとお気付きではないでしょうか。
比較的空いている高速道路で、周囲の自動車が時速100kmで流れている場合など、「自分だけ80kmで走行していたら迷惑になるのではないか」、「かえって追突されやすのではないか」と考え、周囲のスピードに合わせて走行するドライバーも多いはずです。
また、混雑時には、どれだけ車間距離をとろうとしても次から次へと間に入られてしまうため、なかなか確保できないケースもよくあります。
高速道路を利用するドライバー全員の心がけが大切です。
高速道路での交通事故防止のポイント
それでは、「5つの約束」の他にも高速道路で交通事故に遭わない、起こさないためのポイントをご紹介しましょう。
高速道路を利用する前の車両チェック
高速道路を運転する前にできる交通事故防止策があります。
- 出発前に十分な点検・整備を行う
- 停止表示器材を確認する
ガソリンを満タンにしておくことはもちろん、タイヤの空気圧チェックも行うようにしましょう。
国土交通省の調査では、高速道路で発生した車両故障の中でも半数を超える53.1%を占めるのが、タイヤの故障なのです。
また、発煙筒や三角停止表示板などの停止表示器材は常に自動車に備えておくようにしましょう。
高速道路を運転中に車両が故障してしまったら
速やかに路肩に駐車して、ハザードランプを点けましょう。
後続車に「故障で停車中」であることが分かるように停止表示器材を設置し、ガードレールの外など安全な場所に避難するようにしてください。
高速道路を安全に走行するためには、基本的なルール順守の積み重ねが大切です。