運転中の錯覚による交通事故と対処法
やよい共同法律事務所の弁護士やまケンこと、山﨑賢一です。
運転中の交通事故で最も多い原因は、ドライバーの不注意です。
前後左右の安全確認を怠ることで、重大な交通事故に繋がるケースは少なくありません。
しかし、人間には避けることのできない“錯覚”を起こしてしまう性質があります。
実は、運転中、ドライバーたちは様々な錯覚を起こしています。その錯覚が引き金となり、交通事故に至ることもあるのです。
今回は、運転中に起こりやすい様々な錯覚と、その対処法についてご紹介します。
目次
目が釘付け!視覚吸引作用
魅力的な人や物に目が離せなくなった経験はありませんか?
それと同じ現象が“危険なもの”にも起こり得ます。
これは“視覚吸引作用”と呼ばれ、人は興味があるものや危険なものに対して、視線を集中させてしまう性質を持っていることから起こるといわれている現象です。
視覚吸引作用で起こりうる交通事故のケース①
大型車の横を通過する際、大きな車体やタイヤを見て「巻き込まれたら大変だ」と意識することで視覚吸引作用が起こり、目が離せなくなります。
見続けることで、ハンドルごと大型車の方へ引き寄せられた結果、接触事故に至ります。
視覚吸引作用で起こりうる交通事故のケース②
壁や木が接近しているとき「危ない!」と危険を感じつつも視覚吸引作用が起こり、そのまま対象物を凝視した結果、ハンドルを左右に切って避ける行動を怠り、対象物に激突してしまうのです。
視覚吸引作用の対処法
何かを一点に見続けている自覚があれば、即座に視線を外してください。
無意識に凝視している場合もあるため、運転中は周りに気を配って視線を動かすようにすると安心です。
また、ダッシュボードに沢山の物を置いていると、それが視覚吸引作用の原因になることもあるので、運転する前に片づけておきましょう。
ぶつかるまで認識できない!コリジョンコース現象
“コリジョンコース現象”という言葉をご存知でしょうか?
見通しの良い道路であるにも関わらず、ドライバー同士が互いの存在を認識できず、交差点の出会い頭で衝突してしまうことを“コリジョンコース現象”と呼びます。
コリジョン(Collision)は、英語で“衝突”の意味を持ち、特に平原や田園地帯など、見通しの良い道路の交差点で起きやすいことから、“田園型交通事故”や“十勝型交通事故”とも呼ばれています。
どちらも同じスピードで走行している場合、ドライバーには目の錯覚が起こります。
片方の車両が止まって見えるか、または存在しなくなるという錯覚です。
そして、互いのドライバーが錯覚に陥ることで、車両同士が衝突する交通事故が起きてしまうという訳です。
コリジョンコース現象は、車両同士以外にも、自動車とバイクの場合でも起こり得ます。
なぜ片方の車両が見えなくなるのか
人は正面からものを見る“中心視野”と、中心から少し外れた“周辺視野”があります。
中心視野では色や形をはっきりと認識できますが、周辺視野は動かないものに反応しません。
目の錯覚で同じ速度の自動車が止まって見えると、周辺視野は反応しないため、相手の車両が認識できなくなるのです。
コリジョンコース現象の対処法
見通しの良い道路で交差点の標識を発見したら、前方だけを見続けるのではなく、左右を正面(中心視野)で見るようにしましょう。
他の自動車が走行していないか、正面(中心視野)から見ると目の錯覚が起きないため、安全に確認することができます。
また、高齢者は、周辺視野が段々と低下していくため、特に気を付けなければいけません。
対向車と衝突事故!曲方指向
カーブを走行している際、無意識にカーブの内側へ寄ってしまう現象を“曲方指向”といいます。
目の錯覚で、右カーブは対向車線が広く見え、左カーブでは自分が走行する車線が広いと感じやすくなります。
人は、無意識に広い方へ寄っていく性質があるため、自然と内側へ寄って走行するのです。
カーブの内側走行は危険で、交通事故に発展することもあります。
右カーブの内側寄りすぎによる交通事故
右カーブに寄り過ぎていると、対向車線へはみ出してしまう危険性があります。
対向車がいた場合、衝突事故も免れません。
左カーブの内側寄りすぎによる交通事故
左カーブでは自分の走行車線が広く見えるため、自然とスピードが加速していく傾向にあります。
スピードが出ていると前方車両への追突、対向車線へのはみ出しの危険性が強まります。
右カーブと同様、対向車との衝突事故の可能性も高いのです。
山間部での危険性
連続で曲がりくねったS字カーブで内側に寄っていると、次のカーブでは切り返しが大きくなるため、車体がふらついたり大きく揺れたりして危険です。
曲方指向の対処法
カーブの内側へ寄らないことを意識してください。カーブを曲がる際、視線は手前ではなく前方を見ます。
左カーブのときはセンターラインを意識し、右カーブは左白線を意識すると内側へ寄らなくなります。
運転中に起こりうるこれらの錯覚は無意識によるものなので、まずは「このような錯覚があるのだな」ということを知って、対処法を覚えておくことが大切です。
万が一、交通事故に巻き込まれた際は、当弁護士までご相談ください。全国どこでも相談無料です。