弁護士が教える!交通事故によるケガ治療で知っておくべきこと
やよい共同法律事務所の弁護士やまケンこと、山﨑賢一です。
交通事故は、予測できるものではなく不意に起こるものです。
突然の交通事故によって、ケガをしてしまった場合には、治療に関して様々な心配が頭をよぎるでしょう。
そこで、この記事では、万一の時に慌てなくて済むように、交通事故によるケガの治療について、知っておくべき内容について解説します。
いざという時に役立ててください。
目次
交通事故にあったらどこで治療する?
交通事故で被害を受けた場合には、相手方(加害者)に対して治療費の請求ができますが、治療先によっては、請求できる場合とできない場合があるので注意が必要です。
交通事故によるケガ!3つの治療先
交通事故でケガをしてしまった場合には、大きく分けると、次の3つの治療先が考えられます。
- 病院
- 整骨院、接骨院、鍼灸院
- 温泉治療、カイロプラクティック
医師の指示による施術が原則
まず、病院で治療した場合には、その治療を必要とする相当の範囲で賠償請求することが可能です。
しかし、整骨院・整骨院・鍼灸院などの場合には条件があります。整骨院・接骨院・鍼灸院などは、補助的な医療行為であり、病院での治療とは区別されています。
そのため、医師の指示による施術が原則となっています。
ただし、医師の指示がない場合にも、施術する必要性や効果が認められる上で、期間や費用が適切であれば認められる場合があります。
医師の指示がなくとも施術を認める保険会社もありますが、まずは医師に診断してもらって、医師の指示のもとで整骨院・接骨院・鍼灸院などを利用するのがベストです。
整骨院・接骨院・鍼灸院などで施術を受ける場合
施術を受けることになった場合でも、継続して施術を受けたい場合には、施術と並行して月に1回は医師の診療を受けてください。
医師の診断がないと施術を打ち切られる場合もあります。
また、整骨院・接骨院・鍼灸院のみの通院をしていると、後遺症の認定を受けることができなくなります。
温泉治療やカイロプラクティックに関しては、法律に基づく補助的医療ではありませんので、原則的には賠償請求は難しいでしょう。
治療は健康保険を使うと良い場合があります
交通事故にあった場合、加害者側の保険会社から、健康保険を利用して治療することをすすめられるケースがあります。
そのように提案された被害者の中には医療費を安くするためにこのような提案をしてきていると考える人もいらっしゃるようですが、実は健康保険で治療した方が被害者も有利になることもあります。
そのケースは、過失割合で、被害者にも過失が認められたときのことです。
被害者にも過失が認められたとき
健康保険を利用せずに治療した場合と、健康保険を利用して治療する場合とでは、後者の方が2分の1ほど治療費が安くなります。
それは、健康保険を利用しない場合には自由診療となり、医療機関は自由に医療費を決めることができますが、利用した場合は保険診療となり、医療費は保険機関の基準で厳しく定められているからです。
以上を前提にご説明いたします。
交通事故の損害賠償請求額を計算する際には、最初に損害額の合計を計算し、その金額に過失割合を掛け、そこから既に支払い済みの治療費などを控除します。
下記の計算方法をご覧ください。
《被害者が受け取れる金額の計算例》
前提条件:治療費100万円、慰謝料など100万円、加害者の過失割合80%
①健康保険を使わずに治療費に100万円がかかった場合
(100万円〈治療費〉+100万円〈慰謝料等〉)×80%-100万円〈支払い済み治療費〉
=60万円〈被害者受取額〉
②健康保険で治療費を50万円に抑えた場合
(50万円〈治療費〉+100万円〈慰謝料等〉)×80%-50万円〈支払い済み治療費〉
=70万円〈被害者受取額〉
このように計算例を比較すると、健康保険で治療費を抑えた方が総受け取り金額が多くなるのです。
被害者にも過失がある場合には参考にしていただければと思います。
むちうち症になった時の治療の流れ
交通事故にあうと、その時は大丈夫と思っても、その後、何らかの違和感が生じ、徐々にその違和感が大きくなる場合が多く見受けられます。
直ちに病院で診察を受けましょう
特に「むちうち症」の場合には、ケガと思わずに過ごしてしまいがちです。
しかし、交通事故から14日を経過してしまうと、相手方(加害者)に治療費を請求することができなくなる恐れがあるので、直ちに病院に行きましょう。
症状固定まで治療継続
通院後は、主治医が「治療終了(症状固定)」と判断するまで、継続して治療を受けることが大切です。
「むちうち症」の場合には、交通事故から6ヶ月が目安とされていますので、面倒がらず、症状固定まで通院を継続しましょう。
また、通院期間が短いと、慰謝料の額にも影響を及ぼします。
通院に交通費がかかった場合
通院時の交通手段は、自家用車、公共交通機関、タクシーなどが考えられます。
これらを利用した場合にかかった交通費も加害者へ請求が可能です。
ただし、自家用車、公共交通機関の利用が原則となっていますので、タクシーの利用は無制限に認められる訳ではなく、ケガの状況により相当な範囲で請求することができます。
もし後遺障害が残ったらどうすればいい?
症状が固定した場合には、それ以降の治療費の請求はできなくなります。
しかし、後遺障害が残った場合には、第三者機関の審査を経て、後遺障害等級認定手続きをすることが可能です。
手続方法は、医師に「後遺障害診断書」を作成してもらい、今まで受けた治療の資料(診断書・診療報酬明細書)や、事故証明、交通事故状況図などを加えて、相手方(加害者)の自賠責保険会社に提出します。
すると、約1~2ヶ月の審査を経て、審査結果が通知されます。
以上が、交通事故によるケガの治療に関するご説明です。
ご不明な点があれば、弁護士やまケンまでご相談ください。