交通事故被害者が死亡した場合、葬儀費用はどうなるのか

交通事故被害者が死亡した場合、葬儀費用はどうなるのか

交通事故によって被害者が死亡したとき、被害者の遺族(法定相続人)は、交通事故の相手方(加害者)に対し、損害賠償請求の一環として葬儀関係費についても請求することができます。

葬儀には、葬祭費用や供養料、墓碑建設費用、仏壇や仏具の購入費用、その他遺体処理費用など、さまざまな費用が発生します。

今回は、加害者に請求することができる葬儀費用の範囲や金額などについてご説明します。

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死亡事故の葬儀関係費はどこまでを含むのか

死亡事故で請求することのできる葬儀費用には、以下の諸経費が含まれます。

  • 葬祭費用や供養料
  • 墓碑建設費用
  • 仏壇や仏具の購入費用
  • その他遺体処理費用など

なお、人はいずれ死亡し、その際にはどのみちこれらの葬儀費用がかかることから、過去の裁判例では「葬儀費用は損害賠償請求の対象とはならない」と主張されたこともありましたが、最高裁によって「損害賠償請求の対象となる」との判断が示されましたので、現在ではそのような主張を裁判所が認めることはありません。

死亡事故の葬儀関係費として認められる額には基準額がある

死亡事故で相手方(加害者)に請求可能な葬儀費用には、損害として認められる基準額があります。
現在の基準額は、原則として上限150万円です。

この基準額は時代によって微増しており、平成10年1月1日以降は120万円(ただし、無職の未成年者は100万円であり、これらは30万円の限度で加減することができる)とされていましたが、現在(平成14年1月1日以降)は、成年・未成年を問わず一律に150万円とされています(裁判基準)。

この基準額は、社会通念上相当と認められる葬儀費用の額から導き出された金額ですので、被害者が死亡した事実が認められれば当然にこの基準額程度の出費はかかるものといえます。

葬儀にかかった実費の立証が必要

葬儀関係費を請求するためには、実際にかかった費用について立証が必要です。

したがって、実際に支出した葬儀費用が基準額を下回るときは、請求することができる金額は実際に支出した金額までです。

遺体運搬料は上乗せして請求ができる

遺体運搬料は葬儀費用の基準額には含まれませんので、遺体運搬料がかかったときは、別途、基準額に上乗せする形で遺体運搬料を請求することができる場合があります。

なぜなら、被害者が遠方で死亡したときには、50万円程度の遺体運搬料がかかるケースもあることから、遺体運搬料を基準額に含めてしまうと、被害者(交通事故で亡くなった方の法定相続人)に酷な結果となってしまうからです。

150万円を超える葬儀関係費が認められた例もある

葬儀費用は、基準額(150万円)と遺体運搬料の合計額であるのが原則ですが、まれにこの基準額を超える葬儀費用が認められるケースがあります。

たとえば、交通事故の被害者に社会的地位が高く、

  • 立派な葬儀を営む必要があったことから実際に500万円の葬儀費用がかかったケースで250万円を認めたもの
  • 墓地や墓石代を含めて700万円の費用が掛かったケースで250万円を認めたもの
  • 遠方の死亡地で通夜と告別式がなされた後、地元でも通夜と告別式がなされたケースで200万円を認めたもの

などのケースがあります。

また、様々な事情から、基準額に20万円~30万円を上乗せしたケースもあります。

葬儀関係費は自賠責保険基準と裁判基準で異なる

150万円を超える葬儀費用が認められた裁判例があるとはいえ、交通事故の相手方(加害者)が負担すべき葬儀費用は「社会通念上相当と認められる限度」(最高裁昭和44年2月28日判決)とされています。

そのため、被害者や遺族の宗教や地域の慣習などによって、葬儀の規模や内容が一般的な葬儀の規模や内容を超えたものとなり、被害者の遺族が実際に高額な葬儀費用を支出したとしても、損害賠償請求の対象となる葬儀費用は、原則、基準額である150万円となります。当然に上乗せできるのではなく、原則は上限150万円であることにご注意ください。

現実の支出額
(実費)
  賠償額
(裁判基準)
200万円 150万円が上限
130万円 130万円が上限

また、上記は裁判基準の金額であり、自賠責保険基準では100万円が上限とされています。

自賠責保険の支払基準改正により、令和2年4月1日以降に発生した交通事故については、葬儀関係費は60万円から100万円に変更されました。
なお、令和2年3月31日以前に発生した交通事故については、従前のとおり、葬儀関係費は原則60万円、必要かつ相当な出費であれば上限100万円となります。

ご参考まで

香典返しは費用として認められるのか

香典返しは葬儀費用には含まれず、損害賠償請求の対象とはなりません。

その理由としては、香典返しは香典に対するお返しの意味を持ちますが(もらった香典の金額を基準とした半返しをするのが一般的です)、香典は喪主がその全額を取得するものとされており、葬儀費用から差し引かれることはないからです。

そのため、香典返しを葬儀費用に含めてしまうと、喪主は、香典を取得しておきながら香典返しを負担しなくてもよいことになり、不均衡な事態が発生してしまいます。

また、弔問客接待費(精進落としの食事や葬儀当日の会葬御礼品など)も、香典返しと同様に香典に対するお返しの意味を持つことから、葬儀費用には含まれず、原則として損害賠償請求の対象とはなりません。

葬儀関係費はいつどこに請求したらいいのか

葬儀費用は、まずは喪主がその全額を支出して葬儀や納骨を済ませ、その後、交通事故の相手方(加害者)に対して損害賠償請求をするときに損害額に含めることになります。

しかし、前述したとおり、加害者に対して請求することができる葬儀費用は原則として基準額が認められるだけですので、被害者の遺族が基準額を上回る葬儀費用を実際に支出したとしても、基準額を超えた金額を加害者に負担させることは非常に困難です。

ただし、実際にかかった費用が150万円の基準額をはるかに超えたときは、実際にかかった費用全額を損害に含めて損害賠償請求を行い、被害者の生前の行いや社会的地位などから一般的な規模や内容の葬儀では足りない旨を主張立証しておくとよいかもしれません。

なぜなら、主張立証の内容によっては裁判所が上乗せを認めるケースもありますし、和解交渉をする際の材料として利用することができる場合もあるからです。

弁護士にご相談の上、最善の方法で解決を

交通事故で受けた被害に応じた適切な金額の賠償金を得るためには、専門家である弁護士のアドバイスを求め、そのアドバイスに従って行動することが大切です。

被害者本人が死亡したケースでは、一般的に損害賠償金も多額になりますので、本来であれば得られたはずの補償を受け損ねないよう慎重に行動する必要があります。

特に、一家の支柱が死亡したケースでは、遺された配偶者やお子様が生活費や学費に困窮することがないよに、できる限り多額の損害賠償金を獲得しなければなりません。

当弁護士は、相談者の方々のことを第一に考え、交通事故被害のご相談であれば、何度でも無料で受け付けています。交通事故を原因とするご相談であれば、後見申立てのご相談についても無料です。

また、交通事故の被害者ご本人、そのお身内の方々からのご相談は、事務所での面談だけでなく、お電話やメールでもお受けしております。

遠方にお住まいの方も、ご多忙で来所が難しい方も、事務所までお越しいただかずに無料相談が可能ですので、ご遠慮なくお問い合わせください。

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弁護士 山﨑 賢一 (Kenichi Yamazaki)
弁護士 山﨑 賢一 (Kenichi Yamazaki)

【東京弁護士会所属 No.21102】弁護士歴35年。交通事故取扱開始から21年のキャリアの中で手掛けた案件のうち交通事故分野は9割超。2023年末で累計2,057件の解決件数があり、年間にほぼ100件以上の交通事故事案を解決に導いています(2024年1月現在)。示談金の増額がなければ弁護士費用は一切不要の「完全出来高報酬制」で交通事故被害者を全面サポート!全国対応、交通事故のご相談は何度でも無料です。