交通事故で手首に痛みが残ったらTFCC損傷の可能性
交通事故で手首を痛め、軽い捻挫だと思ってしばらく治療をしていたものの、痛みが治まらず、かといってX線(レントゲン)検査でも異常が出ないケースがあります。
このような場合には、三角繊維軟骨複合体(TFCC)損傷(手首の痛み)を疑うべきです。
そこで、今回は、TFCC損傷(手首の痛み)とはどういうものかについてご説明します。
目次
交通事故によるTFCC損傷とはどんな症状が出るのか
手の関節には、橈骨、尺骨、手根骨という骨があります。三角繊維軟骨複合体(TFCC)とは、これらの骨の安定を図るための軟骨です。
TFCCが損傷すると、手関節尺骨側(小指側の手のひらのつけね)に痛みが発生します。その結果、手関節痛誘発動作(ドアノブを回す、蛇口を閉める、ペットボトルの蓋を開閉する等)が困難になります。X線検査で骨に異常が認められないのに、手関節痛誘発動作で痛みが発生し、痛みが継続する場合には、TFCC損傷(手首の痛み)の疑いが生じます。
交通事故によるTFCCの検査ではMRIが重要になる
交通事故によるTFCC損傷(手首の痛み)とは、前述したとおり、軟骨の損傷です。軟骨ですので、通常のX線検査をしても写らず、異常を発見することができません。
X線検査をしても骨に異常が認められないのに、手関節痛(手首の痛み)が継続する場合はTFCC損傷の疑いが生じますが、その場合でも、とりあえずは手関節の固定治療(サポーター、ギプス固定)が試みられます。3か月程度の固定治療での局所の安静によって痛みや可動域制限がなくなれば、TFCC損傷ではなかったか、TFCC損傷であったとしても軽微な受傷であったといえます。
固定治療での局所の安静によっても痛みが治まらないときは、手根骨と尺骨間の隙間に局所麻酔剤やステロイドを注入します。この局所麻酔剤の注入によって痛みがなくなれば、かなり確定的にTFCC損傷であると診断することができます。
ここまでの治療は保存的療法と呼ばれます。これらの保存的療法によっても痛みが治まらないときは、観血的療法(手術)に踏み切ることになりますが、観血的療法に踏み切る前にTFCC損傷であるとの確定診断を得なければなりません。
TFCC損傷の確定診断は関節造影によります。
具体的には、橈骨手根関節内に造影剤を注入し、注入部位から離れた部分の橈骨関節内にまで造影剤が漏出するかどうかを確認します。MRI検査は、関節造影をする前のスクリーニング検査として用いられます。
痛みを医師に正確に伝えないと見逃される可能性が高い
TFCC損傷(手首の痛み)は、通常のX線検査では異常が認められない軟骨部位の損傷ですから、医師に対し、どの部分にどのような痛みがあるのかを正確に伝えることが極めて重要です。患者の側で痛みを正確に伝えなければ、医師は、TFCC損傷の疑いを抱くことができず、見逃されてしまう可能性が高いといえます。
TFCC損傷の治療方法
TFCC損傷(手首の痛み)の治療方法ですが、前述したとおり、まずは固定治療を行います。固定治療では痛みが治まらないときは、局所麻酔剤やステロイドを注入して様子を見ます。
これらの保存的療法によっても痛みが治まらないときは、観血的療法に切り替えます。
観血的療法には、
- 関節鏡を体内に入れ、関節鏡を見ながら行う方法
- メスで切開して患部を直視しながら行う一般的な方法
があります。
関節鏡を見ながら行う手術は、切開部が小さくて済み、回復がしやすいというメリットがある反面、変性部位や癒着部位を切除することしかできず、断裂部位を縫合することはできないというデメリットがあります。また、担当する医師が、関節鏡を駆使する高度な技術を習得している必要があります。
そして、変性部位ないし癒着部位の切除や断裂部位の縫合によっても痛みが治まらなかった場合には、尺骨の一部を切り離し、尺骨の遠位端を橈骨に固定する「カパンジー法」と呼ばれる手術が選択されることがあります。
また、TFCC損傷だけではなく、尺骨突き上げ症候群(プラス・バリアント)が合併しているときは、TFCC損傷の治療と同時に尺骨の短縮術が必要な場合があります。
変性部位ないし癒着部位の切除や断裂部位の縫合にとどまらず、骨切り術が行われた場合には、抜釘までの期間を含め、1年程度の治療期間が必要です。
交通事故によるTFCC損傷の後遺障害等級
上述した治療を尽くしてもなお、手関節(手首)の痛みや可動域制限が残ってしまったときは、局部の神経症状として、第12級の13ないし第14級の9に該当する可能性があります。実務的には、画像所見による客観的な裏付けがあれば第12級の13が認められやすいといわれています。
また、カパンジー法によって人工的な偽関節が形成された場合には、「尺骨のゆ合不全」と評価されます。そして、この場合に時々硬性補装具を必要とする場合は第8級の8となり、硬性補装具を必要としない場合は第12級に該当します。
適正な損害賠償金を受け取る為には弁護士に相談
TFCC損傷の歴史は比較的浅く、少し前までは単なる手関節捻挫と診断され、観血的療法が選択されることはまずありませんでした。
また、TFCC損傷が一般的に認められるようになった現在でも、通常のX線検査では分からないことからTFCC損傷であることが見逃され、適切な治療を受けることなく、原因不明の手首の痛みに苦しみ、適正な損害賠償金を取得することができないケースもあります。
適正な損害賠償金を受け取るためには、できるだけ早期に弁護士に相談し、弁護士のアドバイスを受けて行動することが重要となります。当弁護士による交通事故の相談は何度でも無料です。交通事故の被害にあったご本人やお身内の方との面談はご希望に応じて承っており、遠方にお住まいの方も事務所までお越しいただかずにご依頼可能です。お気兼ねなくお電話ください。