交通事故で仕事ができなくなった場合
交通事故の被害に遭われた際に発生する損害の種類については、「交通事故一般論」のページで、次の4種類がある旨をご紹介いたしました。
- 積極損害
- 消極損害
- 慰謝料
- 物損
交通事故で仕事ができなくなった場合は、4種類のうち消極損害に該当する「休業損害」と後遺障害に伴う「逸失利益」が問題となります。
ここでは、休業損害の補償対象や注意点、後遺障害に伴う逸失利益のポイントや計算例などをご説明いたします。
目次
交通事故の休業損害と逸失利益
交通事故による被害が原因で、仕事ができなくなったことによって発生する損害は、冒頭で掲げた4種類の損害のうち、2つ目の「消極損害」に該当します。
なぜなら、本来得られるはずのものが得られなくなったことによる損害だからです。
これを前提として、さらに細かく、「症状固定前」と「症状固定後」に分けて考えていきます。
※症状固定とは、交通事故後に入通院治療を続けても、それ以上、症状が回復しない状態をいいます。
症状固定前は休業損害の問題
ケガの症状が固定する前であれば、休業損害が問題となります。
交通事故の被害に遭われて傷害を負うと、その後、しばらくは仕事ができなくなることがほとんどです。仕事を休めば、そのぶん、本来得られるべき収入が得られなくなります。
このような消極的な損害のことを、休業損害といいます。
例えば、給与所得者(勤め人)が交通事故の被害に遭われて、1ヶ月の欠勤を余儀なくされた場合には、1ヶ月分の給与が休業損害の対象となります。ただし、交通費など欠勤した場合に支給されない部分は損害の対象とはなりません。
ケガ治療のために有給休暇を取得した場合も、有給休暇を取得する権利を失った分の損害が生じているので、その損害賠償を請求することができます。なお、仕事を休んだことによるボーナスカットも対象となります。
休業損害の注意点
労災などで給与が補填された場合、補填された部分の二重取りはできません。
労災により補填された場合、足りない部分(補填されなかった部分)の請求しかできないのでご注意ください。
症状固定後は逸失利益の問題(死亡事故を含む)
ケガの症状が固定した後であれば、逸失利益が問題となります。
交通事故の被害に遭われてケガをすると、後遺障害が残ることがあります。場合によっては、死に至ることもあります。
後遺障害が残った場合、交通事故に遭う前と同じようには働けず、本来得られるべき収入が得られなくなり、また、死亡の場合にも、交通事故に遭わなければ得られたはずの収入が得られなくなります。
このような消極的な損害のことを、逸失利益といいます。
逸失利益のポイントは労働能力喪失率
逸失利益の算出には、労働能力の喪失率がポイントとなります。
死亡の場合の労働能力喪失率は100%ですが、生存している場合は、原則として後遺障害の等級によって労働能力喪失率が決まります。
例えば、後遺障害の第1級から第3級までの労働能力喪失率は100%、最低級である第14級の労働能力喪失率は5%とされています。
逸失利益の計算方法
逸失利益は、次のとおり計算することができます。
- 交通事故当時の基礎収入額に労働能力喪失率をかけます。
- 症状固定時または死亡時から就労可能年齢とされている67歳までの年数(喪失期間)を計算します。
- その年数に応じた係数をかけます(国土交通省「別表Ⅱ-1 就労可能年数とライプニッツ係数表」参照)。
※ただし、原則として、第14級の場合は5年、第12級の場合は10年となります。
通常であれば将来的に受領する金額を、あらかじめ受け取ることになるため、その中間利息が控除されます。
※中間利息控除に関する詳細はこちら
- 後遺障害第10級(喪失率27%)
- 交通事故当時の年収500万円
- 喪失期間15年(係数11.938)
基礎収入5,000,000円 × 喪失率0.27 × 係数11.938 = 逸失利益16,116,300円
なお、死亡の場合には、生存の場合と異なり、死亡者本人の生活費は将来的にかからなくなるので、30~50%の生活費控除がなされます。
逸失利益の計算方法に関しては、以下の記事もあわせてご覧ください。
交通事故専門弁護士にご相談ください
後遺障害に伴う逸失利益について、被害者ご自身で計算されるのは非常に難しいところがあります。
適正な逸失利益の金額を調べたいという場合、交通事故を専門的に扱っている弁護士に一度ご相談されてみると良いでしょう。
当事務所でも交通事故の無料相談を受け付けているので、お気軽にご利用ください。無料相談は全国対応しており、お電話やメールにて何度でもご利用いただけます。
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