交通事故による後遺障害等級認定に納得がいかない、非該当になった場合
交通事故の被害にあって後遺障害が残った場合、後遺障害の等級認定を受けることで認定された等級に応じた賠償金を請求することができますが、何らかの理由で被害者が希望した等級が認定されないことがあります。
そこで、今回は、交通事故の等級認定について、不満がある場合の対処方法や注意点についてお伝えします。
交通事故の等級認定とは
交通事故の後遺障害は、重い障害順に第1級(最も重い)から第14級(最も軽い)までの14段階に分類されています。
これらの等級は自賠法施行令別表に明記されていますが、自賠法施行令別表の分類は、労災保険における障害認定実務の基準に準拠したものです。そのため、交通事故事件に関わる裁判官や弁護士は、労災保険における障害認定基準の詳細な解説書である「労災補償障害認定必携」を常に参照しています。
後遺障害の等級認定は、原則として損害保険料率算出機構の中の自賠責損害調査事務所が行いますが、判断困難なケースでは、自賠責損害調査事務所の上部組織である地区本部や本部による調査がなされたり、自賠責保険審査会による審査がなされたりします。その際も、上記の「労災補償障害認定必携」の記載が参考にされます。
納得がいかない時は異議申立てを行う
交通事故の被害者が自賠責損害調査事務所等による後遺障害の等級認定に不満があるとき(非該当であったり、予想よりも低い等級認定がなされたりしたとき)には、異議申立てをすることができます。
異議申立てを行う方法
異議申立ては、通常は加害者の任意保険会社に対して異議申立書を提出して行います。自賠法16条の被害者請求をしているときは、異議申立書の提出先は自賠責保険会社となります。交通事故の被害者が代理人弁護士を選任しているときは、その弁護士が被害者を代理して行います。
異議申立ては、被害者請求のときは指定された書式に必要事項を記載して行います。
異議申立て時の注意点
異議申立てをすると、特定事案として自賠責保険審査会に送付され、自賠責保険審査会の専門部会で審査されることになります。
異議申立ては、自賠責損害調査事務所による調査が間違っていることを自賠責保険審査会に認めてもらうために行うものです。既に自賠責損害調査事務所が判断をしているわけですから、異議申立書には説得的な理由を詳しく記載しなければ、その判断が覆ることはありません。
具体的には、
- 自賠責損害調査事務所が判断根拠とした資料の読み方がおかしい
- 自賠責損害調査事務所が判断根拠とした資料のほか、新たな資料を加えて総合的に判断すると、自賠責損害調査事務所がした判断とは別の判断となる
のいずれかまたは双方について詳細な主張をすることになります。
異議申立てには回数制限はありません。しかし、却下された前回と全く同じ理由に基づいて再度の異議申立てをしたとしても、再度の却下がなされるだけであり、意味はありません。
自賠責損害調査事務所や自賠責保険審査会が等級非該当ないし低い等級の後遺障害を認定したときは、なぜそのような認定をしたのかについて、書面で教えてくれますので、異議申立てをする際は、まずはその書面を読み込まなければなりません。
そのうえで、診断書・診療録・画像などの医学資料を分析し、分からない点は主治医に確認し、可能ならば主治医ないし協力医に意見書を書いてもらい、「労災補償障害認定必携」の該当部分の記載を参照しながら、既になされた等級認定が覆る可能性があるかどうかを検討していくことになります。
なお、自賠責損害調査事務所や自賠責保険審査会が行った等級認定に関する判断は裁判官を法的に拘束しませんので、加害者に対して損害賠償請求訴訟を提起し、裁判の中で後遺障害の等級に該当する旨を主張立証することも考えられます。
しかし、自賠責損害調査事務所や自賠責保険審査会すら説得することができなかったのに、裁判官を説得することができると考えるべきではありません。
むしろ裁判になれば、加害者の側でも代理人弁護士を選任し、こちらの主張に対して逐一反論してきますので、等級認定に至るハードルは更に上がると考えるべきです。
等級認定の交渉やアドバイスは行政書士に相談を
昨今は、後遺障害認定に特化した行政書士が多く存在します。それらの行政書士は、後遺障害認定に特化していますから、弁護士以上の高度な専門知識と経験を有しています。
自賠責損害調査事務所や自賠責保険審査会は等級認定の専門家集団ですから、これらの判断に対して異議を申し立てる際は、専門家である行政書士にアドバイスを求め、そのアドバイスに従って行動することが大切です。