交通事故で歯が抜けてしまった!後遺障害が認められるか?
歩行中やバイク乗車中の交通事故で転倒すると、歯が抜けてしまったり、歯を抜かなければならなくなったり、歯が抜けなくとも大部分を失ってしまうことがあります。
また、歯がなくなったことにより、物を噛んで飲み込んだり、話すことが満足にできなくなることもあるでしょう。
そのような場合、後遺障害が認定されるか、後遺障害が認定されるとして何級になるのかが知りたい方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、歯の欠損などの種類と、それらによって認定される可能性のある後遺障害についてご説明いたします。
目次
歯の欠損にはどのような場合があるの?
歯の欠損には、交通事故により歯がなくなってしまった場合と、交通事故後の治療中に歯がなくなってしまった場合の2通りがあります。
交通事故により歯がなくなってしまった場合
交通事故により、歯が抜けてしまった場合はもちろんですが、歯茎から上の部分の4分の3以上がなくなってしまった場合も「歯が抜けてしまった場合」と同様に扱われます。
交通事故後、治療中に歯がなくなってしまった場合
交通事故時に歯がなくならなくとも、交通事故後の治療により、歯を抜かなければならなくなったり、歯茎から上の部分の4分の3以上を切り取らなければならなくなってしまった場合も、後遺障害が認定される可能性があります。
交通事故で歯が欠損したときの後遺障害認定は?
交通事故により歯が欠損したとしても、全ての場合に後遺障害が認定される訳ではありません。
歯の欠損により、後遺障害が認定されるかどうかは、歯が上記のような状態になって、入れ歯、ブリッジ、インプラントなどの歯科治療を行った結果、治療を行った歯の本数によって判断されます。
この治療は「歯科補綴(ほてつ)」と呼ばれています。
歯の欠損により認定される具体的な後遺障害の等級は?
歯の欠損により後遺障害が認定される場合は、以下の通りです。
- 歯3本に対して歯科補綴を行った場合:後遺障害14級2号
- 歯5本に対して歯科補綴を行った場合:後遺障害13級5号
- 歯7本に対して歯科補綴を行った場合:後遺障害12級3号
- 歯10本に対して歯科補綴を行った場合:後遺障害11級4号
- 歯14本に対して歯科補綴を行った場合:後遺障害10級4号
なお、ブリッジによる治療を行った場合、ブリッジをかけるためには、歯科補綴をした脇の健康な歯も削ることになるので、後遺障害認定の際には削った歯も本数に入れて後遺障害を判定することになります。
咀嚼や言語の機能障害による後遺障害認定とは
「咀嚼(そしゃく)」や「言語」の機能障害による後遺障害認定とは、どのようなものかについてご説明します。
歯がなくなったことにより、物を噛んで飲み込んだりすることに支障が出たり、話すことが満足にできなくなったりすることがあります。
前者を「咀嚼機能障害」、後者を「言語機能障害」と呼びます。
咀嚼機能障害や言語機能障害によって認定される後遺障害の等級は、以下の通りです。
- 咀嚼機能または言語機能のいずれかに障害が残った場合:10級3号
- 咀嚼機能および言語機能の両方に障害が残った場合:9級6号
- 咀嚼機能または言語機能のいずれかに著しい障害が残った場合:6級2号
- 咀嚼機能および言語機能の両方に著しい障害が残った場合:4級2号
- 咀嚼機能または言語機能のいずれかの機能を廃した場合:3級2号
- 咀嚼機能および言語機能の両方の機能を廃した場合:1級2号
後遺障害の専門用語解説
「障害が残った」「著しい障害が残った」「機能を廃した」とは、どのような状態をいうのでしょうか。
一般的には聞き慣れない言葉ですが、具体的には次のような状態を指します。
【咀嚼機能の状態】
- 咀嚼機能に障害が残った:硬い物が食べられない状態
- 咀嚼機能に著しい障害が残った:おかゆ程度の軟らかいものしか食べられない状態
- 咀嚼機能を廃した:流動食しか摂取できない状態
【言語機能の状態】
- 言語機能に障害が残った:人間の発する4種類の発音のうち1種類を発音できなくなった状態
- 言語機能に著しい障害が残った:人間の発する4種類の発音のうち2種類を発音できなくなった状態、または、ある音と別の音が結合している音の機能に障害があって言葉のコミュニケーションをとりにくい状態
- 言語機能を廃した:人間の発する4種類の発音のうち3種類以上を発音できなくなった状態
歯の欠損で後遺障害認定された場合に請求できる金額は?
歯の欠損により後遺障害が認定された場合に、被害者が加害者に請求できるのは、「後遺障害慰謝料」と「後遺障害に伴う逸失利益」です。
後遺障害慰謝料の請求金額
後遺障害慰謝料は、認定された等級により金額が異なります。
裁判基準による金額は以下の通りです。
- 後遺障害14級の場合:110万円
- 後遺障害13級の場合:180万円
- 後遺障害12級の場合:290万円
- 後遺障害11級の場合:420万円
- 後遺障害10級の場合:550万円
- 後遺障害 9級の場合:690万円
- 後遺障害 6級の場合:1180万円
- 後遺障害 4級の場合:1670万円
- 後遺障害 3級の場合:1990万円
- 後遺障害 1級の場合:2800万円
後遺障害に伴う逸失利益の請求金額
逸失利益とは、後遺障害により労働能力が失われ、将来的に本来得られるはずだった収入が減ってしまうことを理由として請求できる損害です。
もっとも、実際に収入が減額していなくても、逸失利益の請求は認められるのが一般的です。
後遺障害に伴う逸失利益の金額は、次の計算式で算定されます。
【基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失年数に基づくライプニッツ係数】
上記の計算式に登場する「基礎収入」「労働能力喪失率」「労働能力喪失年数」について、具体的にご説明します。
①基礎収入
「基礎収入」は、原則として交通事故当時の収入となります。
②労働能力喪失率
「労働能力喪失率」は、原則として後遺障害の等級によって定まります。
ただ、職種などにより制限される場合もあります。
後遺障害等級別の労働能力喪失率は次の通りです。
- 後遺障害14級の場合:5%
- 後遺障害13級の場合:9%
- 後遺障害12級の場合:14%
- 後遺障害11級の場合:20%
- 後遺障害10級の場合:27%
- 後遺障害 9級の場合:35%
- 後遺障害 6級の場合:67%
- 後遺障害 4級の場合:92%
- 後遺障害 3級の場合:100%
- 後遺障害 1級の場合:100%
③労働能力喪失年数
「労働能力喪失年数」は、原則として症状固定時から67歳になるまでの期間となります。
逸失利益は、各年ごとに請求するわけではなく、事前にまとめて請求する関係上、利息分を割り戻して計算します。
そのため、実際の期間で算定するのではなく、ライプニッツ係数を用いて計算することになります。
なお、裁判例では等級が低くなるにつれ、労働能力喪失年数の期間が抑えられる傾向にあります。
交通事故専門弁護士にご相談ください
以上が、歯の欠損による後遺障害認定に関わる概要となります。
後遺障害の認定に関しては、種々の問題がありますので、後遺障害の申請をする前に、交通事故専門の弁護士に相談されることをお勧めします。
後遺障害が認定された場合には、弁護士が介入することにより示談金に大幅な増額が出る可能性がありますので、ご自身だけで判断されての示談はお勧めしません。
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