交通事故で肩を負傷!どのような場合に後遺障害が認められるか
歩行中に自動車に衝突されたり、バイク乗車中の交通事故で転倒したりすることにより、肩ないしは上腕骨を骨折するなどの怪我を負ってしまう場合があります。
その怪我を原因として、治療終了後も、肩関節の動きが制限されたり(可動域制限と言います。)、上腕骨の変形、肩周辺に痛みが残ってしまうことも珍しくないでしょう。
そのような、肩関節の動きの制限、上腕骨の変形、痛みにより、後遺障害が認定されるのは、どのような場合でしょうか。
今回は、肩ないしは上腕骨に、どのような障害が残れば、後遺障害が認定される可能性があるかご説明いたします。
目次
交通事故による肩の怪我や骨折
交通事故による肩の怪我には、脱臼、腱板断裂、骨折があります。
脱臼の場合はレントゲン検査で肩の状況を確認することができますが、肩腱板断裂の場合はレントゲンに映らないため、MRI検査が必要です。
骨折も、不全骨折(完全に骨が断裂していない、部分的に繋がっている骨折)の場合は、レントゲン検査で判断できないことが多々あるため、そのような場合は、MRI検査を受ける必要があるでしょう。
MRI検査は、様々な方向からの断面を見ることが可能であり、炎症反応の描出にも優れているので、レントゲン検査よりも骨折を確認しやすいといわれています。
肩の脱臼について
肩関節は外の関節と比べて多方向に思いのまま動かすことができる反面、安定性が悪いという欠点があります。
また、交通事故などにより、一旦、脱臼してしまうと、その後も、脱臼しやすくなるといわれています。
脱臼の処置としては、当然のことながら、脱臼してしまった関節を戻すことになります。
具体的には、レントゲン検査で肩の状況を把握した後、医師による整復術を行います。
整復術を行っても直ちに治癒することはなく、肩関節には痛みや炎症が残るため、相当期間の治療が必要です。
具体的には、炎症がなくなるまでは肩関節を固定して、安静にし、その後、リハビリ治療を行うことになるのが一般的でしょう。
肩腱板断裂について
肩の腱板断裂とは、簡単に言い換えれば、肩の筋が切れてしまった状態のことです。
筋の種類は、棘上筋腱、棘下筋腱、小円筋、肩甲下筋腱などがあげられます。
腱板断裂は、交通事故による衝撃で転倒して、肩を強く打ったり、手を強くついたことによって起こるのが一般的です。
腱板の断裂は、脱臼とは異なり、レントゲンには映らないため、MRI検査が必要なのでご注意ください。
交通事故に遭った後、レントゲン検査では異常がないにもかかわらず、肩の痛みが気になる場合は、できる限り早期にMRI検査を行い、腱板に異常がないかをご確認ください。
MRI検査が遅れると、肩の安静を怠って、症状の悪化を招くことにもなります。
さらには、相手方の保険会社から、腱板断裂と交通事故との因果関係を争われるという結果になりかねないため、腱板断裂の疑いがある場合は早期のMRI検査をお勧めします。
上腕骨の骨折について
交通事故による上腕骨の骨折は、歩行中やバイク乗車中、自動車に衝突され、上腕骨に強い力が加わった場合に起こります。
交通事故の直後は、骨折部位には、腫れや皮下出血などの症状が出て、腕を上げることができなくなります。
痛みも非常に激しく感じられるでしょう。
交通事故による肩の治療方法
肩の怪我や骨折の治療方法について簡単にご紹介いたします。
肩の脱臼に関する治療方法
まずは、脱臼した関節をしっかりと固定するということが重要です。固定により、損傷した筋肉組織の修復をはかるのです。
脱臼は癖になりやすいといわれていますが、出来るだけ癖になり難くするためにも、固定が重要となります。
しっかりと固定した後、肩関節が安定したところで、リハビリにより可動域の修復、筋力の強化をはかることになります。
肩腱板損傷に関する治療方法
肩の腱板が完全に断裂してしまっている場合、おそらく手術は避けられないでしょう。
手術後は長期間の装具による固定が必要となります。その後にリハビリという運びになります。
腱板の断裂が部分的な場合には、一定期間安静にして、鎮痛剤により痛みを抑え、痛みが徐々に軽くなっていけば、手術が避けられる場合もあるでしょう。なお、リハビリは必要です。
上腕骨の骨折に関する治療方法
ヒビ程度の軽い骨折であれば、ギプスで固定して骨癒合を待つという保存的な治療で済みます。
しかし、本格的な骨折の場合には、骨の中への金属の打ち込み、プレートやネジを使用して固定するなどの治療が必要です。
その後にリハビリを行うことになります。
肩や上腕の後遺障害認定について
肩や上腕の後遺障害として多く見受けられるものは、肩の機能障害、痛みによる神経障害です。
肩の機能障害について
肩の機能障害で認められる代表的な後遺障害等級は以下の通りです。
- 後遺障害10級10号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの。肩関節の可動域が健康な関節と比べて2分の1以下に制限されている場合に認定されます。
- 後遺障害12級6号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの。肩関節の可動域が健康な関節と比べて4分の3以下に制限されている場合に認定されます。
痛みによる神経障害について
関節の機能には問題がなくとも、受傷部位に痛みが残る場合があります。
その場合、以下の後遺障害が認定される可能性があります。
- 後遺障害12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの。受傷部位に骨折による変形、腱板断裂の残存などの異常所見があり、痛みが残っていると判断される場合に認定される可能性があります。
- 後遺障害14級9号:局部に神経症状を残すもの。受傷部位に異常所見がなくとも、受傷の程度、治療経過などにより痛みが残っていると判断された場合に認定の可能性がある等級です。
肩や上腕に後遺障害が認定された場合の請求
後遺障害が認定されると、実費や休業損害、傷害慰謝料に加え、交通事故の相手方(加害者)に請求可能な損害があります。
後遺障害慰謝料および後遺障害に伴う逸失利益です。
後遺障害慰謝料の請求金額
後遺障害慰謝料は、傷害慰謝料(入通院慰謝料)とは別途、請求することのできる慰謝料です。
認定された後遺障害の等級により慰謝料の金額は異なります。
以下は裁判基準(弁護士基準)の金額です。
- 後遺障害14級の場合:110万円
- 後遺障害12級の場合:290万円
- 後遺障害10級の場合:550万円
【自賠責基準と裁判基準を比較】
自賠責基準と裁判基準で慰謝料の金額は大きく異なります。
例えば、後遺障害14級の場合、裁判基準によれば110万円ですが、自賠責基準によれば32万円です。
上記をクリックすると比較の一覧表がポップアップ表示されます。
関連記事「後遺障害別等級表・労働能力喪失率」もあわせてご覧ください。
後遺障害に伴う逸失利益の請求金額
逸失利益とは、後遺障害により労働能力が失われたことにより、将来的な収入が減ってしまうことを理由として、請求することのできる損害です。
もっとも、一般的には、実際の収入減がなくとも、逸失利益の請求が認められます。
後遺障害による逸失利益の計算式は以下の通りです。
「基礎収入」は原則として交通事故時の収入を指し、「労働能力喪失率」は原則として後遺障害の等級によって定まります。
ただ、場合によっては、種々の要因により制限される場合もあります。
- 後遺障害14級の場合:5%
- 後遺障害12級の場合:14%
- 後遺障害10級の場合:27%
交通事故で肩を負傷したら交通事故専門弁護士へご相談を
以上が、肩や上腕骨の後遺障害認定に関する概要です。
後遺障害の認定に関しては、一般の方では判断が困難ですので、後遺障害の申請をする前に、交通事故専門の弁護士に相談されることをお勧めします。
また、後遺障害が認定された場合には、弁護士の交渉と、一般の方での交渉では、示談金に大幅な開きが生じます。
ですので、被害者の方ご自身での示談はお勧めできません。
弁護士山﨑賢一は、弁護士費用特約に加入の方は、弁護士費用特約で対応いたしますが、弁護士費用特約に加入されていない方でも、着手金なしで、完全出来高制(詳しくはこちら)での報酬となっておりますので、費用倒れとなる心配は一切ございません。
是非、弁護士山﨑賢一にご相談ください。