家事従事者(主婦/主夫)の基礎収入算定の裁判事例
家事従事者とは男女を問わず、自分自身は稼働せず、もっぱら家事を行っている者を指します。
家事従事者の基礎収入は、賃金センサスの女性労働者の学歴計全年齢平均の賃金額を基礎とするのが、最高裁判所の判断です。なお、高齢者の場合は、減額される傾向にあります。
兼業主婦(兼業主夫)の場合は、実収入が上記平均賃金を上回るときは実収入により、下回るときは平均賃金により算定します。
実収入と家事労働分の加算は、認められないのが一般的です。
以下、裁判事例をご紹介します。
目次
平均賃金を基礎収入とした裁判事例|交通事故による逸失利益
以下、平均賃金を基礎収入とした裁判事例をご紹介します。
裁判事例1
事故当時、家事労働に従事しており、その後、息子が結婚のため別居することとなったが、事故当時、息子の結婚は予定されていなかった主婦(症状固定時57歳)。
裁判事例2
事故後、症状固定前に夫が死亡した主婦につき、逸失利益は事故時に発生しており、夫の死亡を理由として加害者の負担が軽くなるということは公平の理念に反するとされた。
裁判事例3
腰痛、右手関節に痛み、顔面に瘢痕の残った後遺症併合11級の主婦(事故当時61歳)に、上記平均賃金を基礎として、喪失期間13年間が認定されています。
裁判事例4
上記平均賃金を基準として、喪失期間12年間(平均余命の50%)が認定された、右股関節の機能、及び、右腿の知覚に障害が残り、精神障害も伴っている後遺症併合9級の主婦。
裁判事例5
妻が実家の事業を継いだため職につかないまま家事全般に従事していた被害者(男・症状固定時49歳)につき上記平均賃金を基準として逸失利益を算定しています。
裁判事例6
事故の5年前に解雇された後無職のままで、稼働中の妻に代わり、家事に継続的に従事していた男性(症状固定時56歳)に、上記平均賃金を基礎として、逸失利益を算定しています。
平均賃金を基礎収入としなかった裁判事例|交通事故による逸失利益
以下、平均賃金が基礎収入とされなかった裁判事例をご紹介します。
裁判事例1
パートタイマーをしていた兼業主婦につき、賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎とせず、パート収入を考慮して、賃金センサス女性学歴計35歳から39歳平均を基礎収入としました。
裁判事例2
婚約中で既に同居し家事を行っており、また、開店予定の飲食店の手伝いをして稼働する予定であったことから、兼業主婦として稼働する可能性があったとして、賃セ女性学歴計30歳から34歳平均を基礎収入とされた被害者(女・固定時30歳)。
家事労働分を加算した基礎収入裁判事例|交通事故による逸失利益
先述のとおり、実収入と家事労働分の加算は、認められないのが一般的ですが、家事労働分が基礎収入に加算された稀有な裁判事例をご紹介します。
裁判事例1
家事労働については賃セ女性45歳から49歳平均額を基礎として週5.5日分、これに給与分を加算した額を基礎収入と認定した、自宅で週3回1日あたり半日ピアノ講師を営んでいた兼業主婦。
高齢者の基礎収入裁判事例|交通事故による逸失利益
以下、高齢者の場合の裁判事例をご紹介します。
裁判事例1
入院がちな妻に代わり、同居家族のため家事の多くを分担する被害者(男・症状固定時84歳)につき、家事労働の評価を月額18万円として3年間分が認定されました。
裁判事例2
息子と同居している家事従事者(女・事故時72歳)について、賃セ女性学歴計全年齢平均の80%を基礎収入としました。
裁判事例3
夫が入院中であったが、事故まで見舞に行く回数も少なく、家事従事者とは言えないが、事故に遭わなければ夫の世話などをする蓋然性も否定できないとして、賃セ女性全年齢平均の3割を基礎収入と認定された主婦(女・症状固定時65歳)。
裁判事例4
後遺症1級の家事従事者(女・症状固定時89歳)につき、賃セ女性学歴計全年齢平均の50%を基礎収入としました。
裁判事例5
事故当時、妻と、勤めている娘とで生活し、被害者は家事の一定割合を分担しているが全面的ではないとして、賃セ女性学歴計65歳以上平均の4割を基礎収入とされた被害者(男・症状固定時77歳)。
裁判事例6
無職者(女・症状固定時69歳、一人暮らし)につき、休業損害は否定したが、長男家族と同居し、その家事を分担して行う蓋然性があり、労働の意欲及び能力もあったとして、賃セ女性学歴計65歳以上平均の7割を基礎収入としました。
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